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オンライン申請という言葉を最近よく耳にするようになりました。
オンライン申請というのは、役所に対する種々の申請手続きを、本人あるいは本人から委託を受けた専門家が、役所に出向かず自宅や事務所のパソコンを使って行おうというものです。
   従来の紙による申請  
   
   オンライン申請  
 
このように書くと、いかにも手軽に申請できるかのような印象を受けるかもしれませんが、少なくとも登記申請に関する限り、実際はそれほど簡単なものではありません。
というのも、パソコンがあるだけではオンライン申請をすることはできず、ソフト・ハード面での環境を整える必要があり、これが結構やっかいです。
たとえば、ハード面では、スキャナの他、申請の際に使用するICカードを読み取るために、ICカードリーダ・ライタという機器を用意する必要があります。
ソフトについては、一部無償でダウンロードできるものもあるのですが、書類をPDFファイルに変換するソフトなどは自分で購入しなければなりません(ただし、スキャナにこの機能が備わっている場合は不要)。
よく知られているのはAdobe社のAcrobatですが、Ver8のStandardだと約36,000円かかります。
また、具体的な申請手順についても、一度は講習会などに参加してよくわかった人の説明を聞かないと、独力で理解するのはなかなか大変なのではないかと思います。

それでは、そのような面倒な準備作業をしてまでオンライン申請を行うメリットはあるのでしょうか。
答えは、はっきりあるといえるでしょう。
というよりもむしろ、オンライン申請をしない、すなわち、従来どおり紙の申請書類を作成して役所まで持参する方法をとることのディメリットが今後は目だってくるように思われます。
たとえば不動産を購入する場合を考えてみます。
適当な物件が見つかった場合、通常は売買契約を締結して買主は手付金を支払います。
そして、その後しばらく期間を置いて最終的な決済が行われます。
この決済の場で売買代金の残額全部を支払うことになるため、不動産の買主にとって決済手続きはきわめて重要な意味をもちます。
すなわち、代金を全部支払ったのに結局不動産を取得できなかったという事態に至らないために、決済の時点で、買主が確実に不動産を取得できることが確認できなければならないのです。

具体的には、買主が登記名義を確実に取得できるかがポイントになります。
そこで、通常は登記の専門家である司法書士が決済に立会い、売主が持参・署名した書類に不備はないか、その他登記手続きに支障がないかどうかを確認した上で、代金の支払いが行われます。          

従来は、決済終了後司法書士が売主・買主双方から預かった書類を一旦事務所に持ち帰り、再度チェックをした上で管轄法務局へ持参して登記申請するのが一般的な方法でした。
ところがこの方法では、管轄法務局が遠方にある場合などは特に、事務所から法務局へ到着するまでに少なからず時間を要するため、決済終了時から法務局での受付時までの時間的なずれ(タイムラグ)が発生してしまいます。

一般に、登記手続きは先に申請を行った者が勝つ仕組みになっていて、たとえばこの不動産が二重に譲渡されていて、第二の買主が先に登記申請をしてしまえば、民法上、第一の買主は不動産の所有権を主張できなくなってしまいます。
その場合、買主としては、売買契約を解除した上で、売主に対して支払った代金の返還を求めることも考えられますが、実際にはそういう売主は無資力であったり、決済の後すぐに行方をくらましてしまうのが普通でしょうから、買主としては泣き寝入りをする他なくなってしまいます。
このような訳で、前述のタイムラグは少なければ少ないほど望ましいといえます。

この点事務所のパソコンからオンライン申請を行うと、ほぼ瞬時に受付がなされるので、法務局まで書類を持参する時間分だけ、タイムラグを減少させることができます。
このような点から、オンライン申請は買主の権利の保全に役立つシステムだといえます。

政府は平成18年、「IT新改革戦略」を策定し、 国・地方公共団体に対する申請・届出等の手続きにおけるオンライン利用率を2010年度までに50%以上とすることを目標としています。

一方、不動産登記申請のオンライン化は平成17年から開始されましたが、オンライン利用率は、全体の0.2%に留まっていました。
そこで、オンライン利用率をアップさせるため、オンラインによって登記申請をした場合、登録免許税(登記手続きに当たって国に納める税金)が最大5,000円減額される制度が平成20年からスタートしました。(平成21年12月28日までに受け付けられた申請に適用されます。)
もっとも、すべての不動産登記について減税される訳ではなく、移転登記(売買、贈与、相続などの際に必要となります。)及び抵当権設定登記(不動産を担保にして融資を受ける際に必要となります。根抵当権でも可。)に限られます。(オンライン申請を行うためには、不動産を管轄する法務局がオンライン申請に対応した「指定庁」であることが必要ですが、平成20年3月中には、全国のすべての法務局が「指定庁」となる見込みです。)

今後、司法書士に登記手続きを依頼する場合は、その事務所がオンライン申請に対応しているかどうか確認するとよいでしょう。

オンライン申請のメリットは上記のような不動産に関するものだけでなく、会社設立の場合にも当てはまります。
不動産の場合と同様、平成21年12月28日までに受け付けられた設立登記(組織再編に伴う設立を含みます。)については、登録免許税が最大5,000円軽減されます。
さらに、株式会社を設立する場合は、公証人による定款認証手続きが必要ですが、この手続きをオンラインで行うこと(いわゆる電子定款)により、収入印紙代の40,000円が不要になりますので、合計で最大45,000円の経費節減が可能になります。
なお、定款認証と登記申請の双方を代理して行える業種は弁護士と司法書士だけであり、他の業種が行うことは違法とされていますので、手続きを第三者に依頼される場合はご注意ください。

     
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